カテゴリ:文学フリマ( 60 )

第11回文学フリマ読書感想2

菱井真奈「小鳥のしこり」

表紙はレトロ調のキラキラした少女のイラストなのだが、ハエみたいな目をしてて怖い。(ここで見れる)

10歳の、早熟な少年と、彼に惹かれる"野菜を面取りしたあとのカスみたいな"、"心身ともにちょっぴり醜悪な"少女の、ひとなつの危険な体験が、少女の不気味に軽快な一人称で描かれている。各章題が無料エ○動画のタイトルの引用で、作品のモチーフともなっている。

東京天竺という同人に発表されている作品からのファンなのだが(過去の感想)、セクシャリティを徹底的にエグく、無価値に、粗末に扱っており、ひとが「女性」なるものに抱く幻想を、さらなる悪夢で打ち砕いてくれる。
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by lol_5 | 2011-02-05 14:19 | 文学フリマ

第11回文学フリマ読書感想1

永田惟短編集「皮」

まず装丁の食パンの写真が妙に可愛い。
表題作、過食症で不倫中の女が、呑気なような一人称で描かれる。この呑気な風ってのが、意外とネックで、下手なポップさでお茶を濁しているわけではなく、冒頭に現れるモチーフ、後半のドラマ、リアリティとテーマ、このすべてをうまいこと繋ぐ役割をしていて、見事なもんだと思った。一人称の小説の、不意に読者を孤独にさせる感じ。

他に2作収録。テーマに素直で、かつ小気味良い。
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by lol_5 | 2011-01-24 22:53 | 文学フリマ

第10回文学フリマ読書感想(3)

「ドールハウスの童話」佐藤

3本の「童話」を収録。内容は説話の構造をきっちり踏まえた(1本毛並みの違うのあるけど)王道でリーダブルな作品だが、はたして童話の読者層である小学生とかが文学フリマにきたりとか、文学フリマで買った本を子どもに読ませたりすることがあるのだろうか。概ね実際に読んでるのはある程度の大人の方々であろう。

そんなことは作者も承知であろうに、あえて童話の体裁、文体で、<君の知っている学級委員長の三倍は真面目でした。>などといった語りかけを仕掛けてくる。それを30前のおっさん(私だけど)が読んだりして「ああ、子ども扱いされてるわ」とオギオギするのだ。

前作「山猫」では怪談の講釈調、前々作「ピーピングダイアリー」では日記の盗み読み、文学フリマなどで配布されているフリーペーパーでも、「友人S」という謎のパーソナリティの人物の一人称で佐藤氏と作品を紹介している。
語りの位相をずらすことによって読者が作品にアクセスする際にワンクッションを置かせて、作品と読者の間に不思議な関係を生み出させるのが佐藤氏の魅力であると思う。小説ならではの楽しみでもある。
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by lol_5 | 2010-08-21 11:51 | 文学フリマ

第10回文学フリマ読書感想(2)

「猿入り娘」平方二寸

表題作のほかに同じ作者の短編が6編。

収録作それぞれに味があってどれも好きだけど、表題作の妙に半端な野生と、「すっぽんを割る」の、ローテンションでサイキックな子ども小説が特におもしろかった。

なんだろうなあ、この雰囲気と思って、ああ、悪夢だな、と。
お化けが襲ってくる、みたいな恐怖ではない(出てくるのもあるけど)、不条理、倦怠、憂鬱、死。
夢だって気づいてる類の、傍観的な、それでも自分自身であるという漠然とした実感。

他にフリーペーパー「全家畜」もいただいたが、「日本近代自然主義文学」というコーナーがあって、自然主義作家の作品を一作ずつ似顔絵つきで紹介しているのにショック受けた。正宗白鳥が吹き出しで「逆に何で死なないのか訊きたいわ」って。言いそう。
ベタの濃いマンガも、途中で投げやりになってくるエッセイも好みです。
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by lol_5 | 2010-06-14 20:43 | 文学フリマ

第10回文学フリマ読書感想(1)

「実験 No.8」(実験倶楽部

アイヌケンネル「明日に向かって書け」

web社会を代表するような、浮遊した固有名詞を撒き散らしながら、コンビニ強盗を繰り返しつつ、「小説」から多摩川へ逃走を続けるサンダンス・キッドとブッチ・キャシディ。(以上あらすじ、比喩ではない)
ナンセンスに見えても割合筋道はしっかりしていて、嫌味がない。

高橋源一郎の影響明らかだが、やけに素直で愛らしい二人のギャングが、アホかと思えるくらい簡素な文体で、立ち止まらずにずかずか突き進んでいく。だもんで唐突な展開でもすんなり読み続けられる。
身内の作品だけど良かった。
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by lol_5 | 2010-06-03 21:51 | 文学フリマ

第10回文学フリマありがとうございました

LOL9号と11号、そこそこ捌けました。すでに感想などをアップしている先などもありまして、まことに恐縮です。
私の購入分、具体名は避けますが、

新規
12サークル
リピート
8サークル
身内(國學院大學文藝部関連)
2サークル

です。気になった作品は随時感想をアップしていきたいと思いますが、全部読み終わるまで1ヶ月以上かかるかと。

文学フリマ公認みたいな大交流会があったようですが、私は行きませんでした。あくまで作品を通じて交流したいなあと思うんで。人を見て作品を読みたくなることも絶対にあるんで結構なことだとは思うんですけどね。
私小説好きだし。
でも、まったく興味の無い作品書く人とかと人同士の交流に入っちゃうと、創作活動上の苦痛になる可能性があるなあとも思うんですよ。あえて無視する、ていうのがお互いにとって良い場合もあると思います。いがみ合ったり、一方を排除しようとしたり、逆に疎外感を勝手に感じて鬱屈したりするよりかはずっといいでしょう。
無理やりの「みんな仲良く」ではなくて、誰もが存在を脅かされないような文学フリマが理想かな、と思います。
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by lol_5 | 2010-06-01 23:38 | 文学フリマ

第10回文学フリマ、気になるサークル

というか、以前購入したサークルですが。
リンク先は全て私の感想の記事です。

E-06 M@D AGE
E-15 DAISY CHAIN 制作委員会
G-05 「共感覚」ペンクラブ
I-11 西瓜鯨油社
J-07 木曜日
J-05 1103号室。
J-18 大吉エクセレント
K-11 佐藤
N-08 肉屋

他のサークルについても、今回は事前にサークル紹介を熟読しとこうと思います。
そういや、以前どっかのサークルが、「全サークル紹介」などと称して、予断や推測で期待値なんかつけてたの思い出しました。(うちはラジオの台本を書いてるサークルって紹介されてた)
わりとカチンときたので、そういういい加減なことにはならないよう気をつけます。

今回、「本当はこの文章系同人がすごい」への寄稿は見送りました。見送ったというか、見逃し三振しました。ごめんなさい。

ついでに

A-18 √7
K-19 実験倶楽部

上記二つは私の大学の後輩のサークルのようです。熱心な青年たちです。

(サークル番号の間違いがあったとのことなので、一部修正しました)
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by lol_5 | 2010-04-19 22:51 | 文学フリマ

第9回文学フリマ読書感想その8(ラスト)

「零と士 創刊号」(サブカル堂)※委託だった模様、購入したサークルは肉屋

「創刊の辞」とか「創刊に際して」とか「創刊のことば」とかいう記事だけで9本、全体のページ数の3分の1を占める。そして「休刊の辞」もある。この雑誌はこれで終わりらしい。この世界の片隅にはこんなにもふざけた人たちがいるのかと感心した。

肉十八「ダーティーハリーポッター」
題名からもう嫌な予感がするだろうが、ダーティーハリーが魔法学校に潜入する。しかも書き出しが「ぼっちゃん」


親譲りの鉄砲(マグナム)で子供の時から損ばかりしている。


良い意味で最低。
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by lol_5 | 2010-01-15 22:16 | 文学フリマ

第9回文学フリマ読書感想その7

「東京天竺 2」(東京天竺

菱井真奈「蜜経新聞販売店にてアーバンライフ」
あらすじとか面倒くさい。暴力的かつものすごく即物的で、さも当然のように狂ってるところが、この人大丈夫なんだろうか、と心配させるが、ブースでお見かけしたところ普通の女の子だった。中原昌也がまちがって女らしくなったらこうなんじゃないかと思われる。

福島侑子「裏庭」
皇太子妃美智子殿下の御成婚の話題になる頃。精神科医を父に持ち、病院の中で家族と住んでる少女は、病院の裏庭で、一人自転車の練習をする。病棟の上からはいつも、その様子をじっと見ている患者がいる。
少女の生活をあたたかに描きつつ、それによって子どもには見えない世界のあることもほのかに浮かびあがらせている。挫折も成長も無く、ただ少女を描いたことが好ましい佳品。
ああ、なるほど長嶋有の弟子筋だな、という感じ。
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by lol_5 | 2010-01-15 22:05 | 文学フリマ

第9回文学フリマ読書感想その6

「雨の日、テトラポッドで」霜月みつか(1103号室

ゲイとノンケの悲恋、と書いてしまうと実も蓋もないが、気取らない筆致で関係を丁寧に描いている。
ゲイ側とノンケ側の各々の語りで同じ事柄を別に章立てて書いていて、こういう手法は得てしてご都合主義に陥りやすいんだけど、この作品に関しては主観が一方に偏ることなく美しく対称になっていて読みよかった。

セクシュアリティの問題をちゃんとかけてるかどうかは私自身が寡聞なのでちょっとよくわからんが、作者の作品に対する誠実さ、丁寧さは読んでて印象に残った。


ちなみにあと3冊で文学フリマで入試した本全部読み終わります。
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by lol_5 | 2010-01-09 11:05 | 文学フリマ