カテゴリ:文学フリマ( 60 )

第9回文学フリマ読書感想その5

「山猫」佐藤(佐藤

怪談、ということで明瞭で誠実そうな語りの文体がぽくて気持ち良い。フリーペーパーやあとがきの文章もユーモラスで好きなんだが、本文においてもくだけたカタカナ遣いが上記の文体の雰囲気に加えて作品の重さをうまく調節してると感じた。
内容は怪談以上でも以下でもないと思うんだけど、これからミステリーでもホラーでも現代小説でもなんにでもふくらみそうなポテンシャルを感じる。「怪談とはいかなるものなのか」が正直あんまり私はわかんないんだが、むしろもっと長く小説らしくしてもらいたかったかなとは思う。人物なり語りの雰囲気が優しいので、それを丁寧に味わいたいなあと。
[PR]
by lol_5 | 2009-12-26 13:57 | 文学フリマ

第9回文学フリマ読書感想その4

「M@DAGE vol.2」(M@DAGE

日高稔「ゲームの規則」
地下室のような場所で、<僕>と<彼女>はコンソールを見守っている。このコンソールは異常が起きた場合は二人でなければ処理できない仕組みになっていて、<僕>と<彼女>はお互いのことを(知りたいと思いながらも)何も知らず、お互いを監視している。
基本的に、緊張感と諦念の入り混じった醒めた文体だが、ところどころに柔らかな表現も顔をのぞかせて、ある種のやさしさが感じられる。

幸田龍樹「空から発つグライダー(デモヴァージョン)」
「デモ」ということなのか話がほとんど動かないんであらすじはよう分からん。しかし、独特かつ多彩なダイアローグで構成されていて、福永信を髣髴させる。でも福永さんよりも暢気でハッピーな感じ。最後までこの調子で構成しきれば怪作の予感はする。

麹弘人「錆の海」
あらすじだけいってしまうとエンジニアが夜中に同僚に呼び出されて、ようわからん機械を修理しに行くってだけなんだが、簡明な文章で、夜風の気持ちいいような現実感を生み出してるのはかなり好み。ラストの機械が出てくるシーンでふっと幻想的なものを垣間見せるのも好み。

でも全作品ともに短いです。無料じゃなくていいから、三者ともまとまったものを読みたい。
[PR]
by lol_5 | 2009-12-26 13:38 | 文学フリマ

第9回文学フリマ読書感想その3

「大吉 弐」(大吉エクセレント

入地均「村岡のいる街」

大小さまざまな怪物が現れるようになり、そのために人が簡単に死んだり、幸せになる世界。深夜に寄ったマクドがビルごとひっくり返されて、そこで人殺しの少女に出会う主人公。なんとなく流れで家に連れてきたが・・・・・・

よくある村上春樹型主人公と不思議ちゃんのボーイミーツガールだと思いきや、本当に気力の無いどこか暢気な主人公と、とにかく誰かにあらすじを説明してやりたいくらいの絶妙な脱力系不条理展開に引き込まれ、ニヤニヤしながら一気に読んでしまった。

語り手でもある主人公の、やる気の無いなりに、おかしくなってしまった世界と誠実に向き合おうとする姿勢がなかなか憎い。正直、文章そんなに上手くなく、誤字も多いんだが、これはヘタウマってやつなんだろうと思えてくる。

ちょっとだけネタ晴らしすると、小説の最後で、主人公の見た目がオリックスの仰木監督のようになる。それで、「続く」とくるんだから気になってしまうではないか。
[PR]
by lol_5 | 2009-12-23 11:52 | 文学フリマ

第9回文学フリマ読書感想その2

「DAISY CHAIN vol.5」(DAISY CHAIN製作委員会

羽岡元「空の人魚」
 学校サボってアメンボを探しに行った高校生の「僕」は、あるビルの屋上に「人魚」を見る。「人魚」は自分と同じ高校の制服を着て、彼女は飛び降りて・・・・・・
 エンターテインメントらしい個性的な登場人物を配して、あらゆるワクワクドキドキ要素をサービスしつつも、文体さわやか、展開や人物も制御されていて、くどさがないので読みやすい。やや最後急ぎすぎな気もするけど、いい意味で大人が書いた青春小説だなあと思った。あんまり内容を詳しく言うのはアレなタイプの小説なんだけど、個人的にはいろんな女子高生がいっぱい出てくるので嬉しい。
[PR]
by lol_5 | 2009-12-18 22:39 | 文学フリマ

第9回文学フリマ読書感想その1

「コルキータ」牟礼鯨(西瓜鯨油社

前に買った本と同じ世界観で、交わったもの全てが40日で死んでしいく呪われた高級娼婦と、彼女に恋した青年の運命を軸にしつつ、大帝国の地方反乱とその鎮圧までを描く。

娼婦の造形が、なんとなく森茉莉「甘い蜜の部屋」のモイラを髣髴させる。ただ、文体は森茉莉さんみたいな芳醇濃厚な感じではなく、かといって枯れてるわけでもなく、重からず軽からずで質実が整っていて、ファンタジー読み慣れていない(むしろ毛嫌いする向きもある)私でも特殊な世界観が受け入れられて読みやすい。

後半の展開が、内乱の動向に注視しすぎて、タイトルでもある娼婦の描写とのバランスをやや欠いてる気がするのが個人的に不満だが、一から世界観作り上げてるだけあって、構成が重層で、視点の切り替えとかもうまくて、飽きさせない工夫がみられる。

あと、個人的なことで、偽私小説書きだった私は、最近「書かれた小説」についてその著者、作中の語り手、それから読者の三者関係が自分のなかで消化しきれなくなって小説書けなくなっちゃったんだけども、著者の「世界図書館」っていう概念(第8回文学フリマのサークル紹介参照)からなのか、この作品はその三つがほぼ同一(「世界図書館」で発見された物語の下において、その著者は作中の語り手でもあり、また読者でもある)になっているような気がして、なんとなくうらやましく感じた。
[PR]
by lol_5 | 2009-12-12 14:21 | 文学フリマ

第9回文学フリマお疲れ様でした。

ご購入、ご交換、ご来場の皆様、ありがとうございました。LOL10号は(知り合いがいっぱいいたので)ほぼ完売しました。
よそのサークルさんが来てくれたり、「ブログ読んでます」といってくれたひとがいたり、なぜか文学フリマのパンフの座談会で取り上げられたりとかしてて、本当にありがたかったです。もっとちゃんと作ればよかったと後悔しました。いや、掲載作品自体は(たぶん)ちゃんとしてるので、感想などありましたらぜひともお寄せください。

私自身は、二日酔いのうえに人の気にあたって(多かったよ)頭痛がひどかったので、あんまりちゃんとまわれませんでした。詩と評論のとこはまったくといっていいほど見てない。見逃した面白かったかもしれない本のみなさん、申し訳ありません。

ポップもパネルも用意できずに、冊子自体も非常に地味な仕上がりになったので、せめて自分だけでも目立とうと、水戸の美術館で買った「やればできる!!!」と黄金色にプリントされた真っ青なTシャツを着ていきました。しかし、じぶんでまわってて気づいたんですが、机の上の本に集中して売り子なんて見ませんね。ただの恥ずかしい服を着た人でした。Tシャツはその日の打ち上げで、やればできそうな後輩に差し上げました。

購入・交換・いただいたリスト(太字のサークルはリピーター)

西瓜鯨油社「コルキータ」「一つの愛とその他の狂気について」
Lumie're「飛び跳ねたエゴイストの肖像画」
kurogoma.info「彼女の傍点」「彼女のポーズ」
M@D AGE「M@D AGE VOL.2」
野宿野郎編集部「野宿野郎5号」
肉屋「零と士創刊号」
bnkr「bnkr vol.2」
佐藤「山猫」
たなか「短くたって気にしないぜ! やっぱり愛があればそれでいいと思うんだぜ?」
Patonen「Patonen #3」
國學院大學文藝部「若木文学2009」「若木分冊2009特別号」
メルキド出版「メルキド6号」
サロン・ド・マロリーナ「サロン・ド・マロリーナ 創刊号」
千葉商科大学文芸部「瑞穂文学 勝鹿 no.57」
東京天竺「東京天竺002」
ストリップ電報「アンダーワールド」
rose「Rose 2009」
1103号室。「雨の日、テトラポッドで」
大吉エクセレント「大吉 弐改」
DAISY CHAIN 制作委員会「DAISY CHAIN VOL.5」
本当はこの文章系同人がすごい編集部「本当はこの文章系同人がすごい」

前回(前々回とか)よかった作品のサークルがまた参加しているのは嬉しいです。読んで気になった作品は随時感想をアップしていきます。

今後ともよろしくお願いします。

http://d.hatena.ne.jp/jugoya/20091206
[PR]
by lol_5 | 2009-12-08 20:26 | 文学フリマ

第9回文学フリマに参加します。

第九回文学フリマ
開催日 2009年12月 6日(日)
時間 開場11:00~終了16:00(予定)
会場 大田区産業プラザPiO →会場アクセス
(京浜急行本線 京急蒲田駅 徒歩 3分、JR京浜東北線 蒲田駅 徒歩13分)

サークル席はH-8です。LOL(ろる)10号を持ってきます。前回は贅沢に印刷所で製本しましたが、今回は〆切が間に合わなかったので、昔のわら半紙刷りに戻ります。
記念すべき10号はLOL史上もっとも薄くなると思われますが、内容は良いと思います。たぶん100円。

目玉は新家智実氏の、羊水みたいなふしぎな男の子小説(羊水って実物見たことないけど)「きよらなる海
あと、わたしが一生懸命吐きそうになりながら書いた変態くさい路上演劇「ソネザキシンジュウ
それから石橋英明氏のくだらない雑文(ほんとうにくだらない)が、ところどころに掲載されています。
(各リンク先でさわりの部分が読めたりします。)
あとなんかあるかも。


よろしくお願いします。

ちなみに上記文学フリマサイトや当日のパンフレットに記載されてるうちのサークル情報は「ほとんど嘘」です。正確には「結果としてほとんど嘘になった」です。具体的にいうと「湯葉みたい」と、企画記事のくだりが嘘です。
[PR]
by lol_5 | 2009-11-30 21:28 | 文学フリマ

「本当はこの文章系同人がすごい(仮称)」

文学フリマなどで行われる企画「本当はこの文章系同人がすごい(仮称)」の賛同者に名を連ねました。
僕がどのような形で参加するかはまだ決めておりませんが、
ご興味のある方は以下のブログをご参照ください。


http://d.hatena.ne.jp/ibuse/20090827/1251373549
[PR]
by lol_5 | 2009-08-30 21:50 | 文学フリマ

第8回文学フリマ読書感想7

「共感覚第3号」(「共感覚」ペンクラブ

矢部嵩氏「花屋の娘」
何かと命を粗末にしようとする友人の部屋へお見舞いに行った帰り、ふと立ち寄った花屋で、店員と一緒に電柱を育てることになる主人公。
意図してるのかどうかしらんけど、鍵括弧の台詞内に句読点がないとか、あと若干単語遣いが荒いのは気にはなるけど、不条理のなかにいる各登場人物の距離感が、淡々としていながら優しくて心地よい。
[PR]
by lol_5 | 2009-07-04 17:29 | 文学フリマ

第8回文学フリマ読書感想6

「さがしもののさがしかた」(IF&others

シンプルで柔らかいタッチの青い鳥と女の子の表紙。意外とこういうのには弱い。でも、これ、女の子が青い鳥逃がしているように見えるけども、そういう意図なのかしら。

短歌と短文と小説。

短歌の31文字ってのは、日常の生活の中で起きる感動を、最も正確に表現できる長さだと思う。散文だと、どれだけ言葉を費やしても、費やしただけ離れていく感動を、短歌なら片手に収まるサイズで、そのまま人に差し出すことが出来る。食べ物やお酒を詠んだ歌や、感動をそのまま素直に、一息に流していくタイプの歌風が個人的には好きです。
[PR]
by lol_5 | 2009-07-04 17:15 | 文学フリマ