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第11回文学フリマ読書感想6(ラスト)

買ったものは大概読み終わったのですが、その他気になった作品を以下に簡単に。

新詩抄「マルグリット・アンヌ・レニエ」
クローゼット・オペラ・ブッファ(読む喜劇オペラ?)と銘打ってあり、レーゼドラマ(読む台本)ってのはあるけど、オペラでは成立するのか、と実際一時間くらい悩んだ。でも筋はシンプルでとっつきやすく、ことばや登場人物も丁寧でわかりやすくて、オペラを知ってる人なら音楽も頭にうちに想起されるのかも、と思った。素人目でも掛け合い(二重奏か)のところはリズムを感じる。

新波小説団「団誌3号」
所収作では柳井美奈人氏「不死身のキノコ同盟!」に、グロテスクなアイディアを強引にロマンスにしたてようとする奇抜さを感じた。

合同誌「全家畜を見つけた!」
LOL12号に寄稿いただいた平方二寸氏と、CUBE氏による合同フリーペーパー。平方氏は漫画、随筆、小説と多方面で独特な観点を示す奇才だが、CUBE氏の「喜望峰遊園地」も、90年代に少年期を過ごしたものにとっては感慨深いモチーフをうまく用いた小説だった。

「DAISY CHAIN vol.7」
表紙の綺麗さは他の追随を許さない。羽岡元氏のエンタメ小説が毎回300枚越えの気合入りまくりで、一度は皆さん読んでみてはいかがだろうか。

あとは岡崎祥久氏にはぜひとも今後も参加してもらいたい。西岡兄妹氏とか、一般市場で活躍している方々と軒を並べるのは参加する身としてもウキウキする。他の作家さんとかも単行本未収録作などを電子化とか同人誌にして売っちゃえばいいのに。
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by lol_5 | 2011-02-22 00:25 | 文学フリマ

第11回文学フリマ読書感想5

茂木万穂「ぼくたちは喉の底で笑う」(若木文学2010)

深夜テレビ好きな、いじめられっ子の男子小学生と、〈ぐしゃりと笑〉う、クラスで孤立している女の子の、不器用で不細工な交流。
鬱屈した子どもの日常を淡々と描いているけど、不思議と嫌な感じはしない。未来が想像されるからだろうかと思った。それは希望とかそんなんじゃなく、ただの時間の流れとしての、今より先の世界。
綺麗になんかならなくたって、夢なんかみせなくたって、わかりあったりなんかしなくなったって、よどみの中から抜け出せなくたって、ひとは救われるんだろうと、読んでてなんとなく感じた。

若木文学は僕の出身サークルの冊子であるが、約10年かかわってきて、うまいとかそんなんじゃなく、この人は「書くべきこと」を書いてるな、と菊地さん(現在LOL所属ですが)以来に思った。

他の「若木文学2010」所収のうちでは、野木健二郎「紅茶の煙草」、河野海月「或る犬の話」を面白くよんだ。
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by lol_5 | 2011-02-21 00:28 | 文学フリマ

第11回文学フリマ読書感想4

アイヌ・ケンネル「メルセデスどこへ行く」(実験倶楽部 No.9)

「タバコとベンツ」の、いわゆる2ちゃんコピペから、都市伝説や怪談など、巷に散乱する物語のかけらをつなぎあわせて、最終的に「桃太郎」になりかける。なんだろう、空想的な観察力とでもいおうか。
イカニモ系な前衛小説のようだが、その物語を繋ぎとめる(物語にまきこまれていく)「僕」の語りが、(たまに細かいことをきにするが)気負いもやる気もない感じで、しかも、登場人物がなんとなくみんな仲良くなるので、奇想が鼻につくことなくのんびり読める。
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by lol_5 | 2011-02-16 23:57 | 文学フリマ

第11回文学フリマ読書感想3

没法子「玩物喪志」(木曜日 No.27)

過去を「再体験」できる仮想空間を開発するも、自らその世界に閉じこもってしまった「救世主」を、『利益のため』『理想のため』『自分のため』理由をまとめきれないまま連れ戻そうとする主人公。
わりと流行りの設定のように思えるが、面白いのは救世主も主人公も中年の冴えないおっさんであるところ。
二人とも幼稚なルサンチマンを抱えてるが、なんだか中年であるがゆえの子供っぽさに思えて、なんとも遣る瀬無い。
上記の人物造形に加えて、主人公のいびつな女性観(欲望?)が視覚化されていたり、乾いた文体でだらしない行動を描写したりして、読んでる間も読み終わった後も、モヤモヤしてしょうがない。
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by lol_5 | 2011-02-13 14:41 | 文学フリマ

第11回文学フリマ読書感想2

菱井真奈「小鳥のしこり」

表紙はレトロ調のキラキラした少女のイラストなのだが、ハエみたいな目をしてて怖い。(ここで見れる)

10歳の、早熟な少年と、彼に惹かれる"野菜を面取りしたあとのカスみたいな"、"心身ともにちょっぴり醜悪な"少女の、ひとなつの危険な体験が、少女の不気味に軽快な一人称で描かれている。各章題が無料エ○動画のタイトルの引用で、作品のモチーフともなっている。

東京天竺という同人に発表されている作品からのファンなのだが(過去の感想)、セクシャリティを徹底的にエグく、無価値に、粗末に扱っており、ひとが「女性」なるものに抱く幻想を、さらなる悪夢で打ち砕いてくれる。
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by lol_5 | 2011-02-05 14:19 | 文学フリマ