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第13回文学フリマ読書感想「V.A.」

「V.A.」(おおきなかぶ
3人の作家で、小説が4編に詩と短歌。表紙が可愛い。
 
DJ Yudetaro「A Short Story of Yi Takayuki」
財を成した日系人の男が、日本で隠居しようと愛人と共に邸宅を借りるも、何故かそこには歯科の設備が残されていて、成り行きで近所の住人相手にモグリの歯医者をすることになってしまう。
奇抜な展開と文章に漂うエキゾチックな雰囲気に引き込まれて読んだが、ラストが唐突な気がしてもったいなく感じた。
散りばめられたユニークなモチーフを、もっとまとまりをもって結末に流しこんでくれれば良かった。
# by lol_5 | 2012-01-09 10:18 | 文学フリマ

第13回文学フリマ読書感想「COMPLEX」

霜月みつか「COMPLEX」(1103号室
タイトル通りに、様々なコンプレックスを題材にした掌編が8篇。どの話も10代から20代くらいの女性の一人称だが、ずいぶんと無愛想で淡々とした文章で、おそらく創作なのに随筆とか手記のようなリアリティを覚えた。作品の距離感が不思議な感じ。
# by lol_5 | 2012-01-08 19:05 | 文学フリマ

第13回文学フリマ読書感想「アーキスとガラティア」

池田陽「アーキスとガラティア」(新詩抄)
ギリシア神話をモチーフにした戯曲。さすがにギリシア悲劇の形式ではないものの、嫉妬と陰謀とすれ違いで組み上げられた古典的な恋愛悲劇の構成に、奥ゆかしく美意識のある文章。あまりの端正さにまさかとは思ったが、デウスエクスマキナまでやってのけていてびっくりした。
現代劇でデウスエクスマキナ的な手法使えばかなりの確率で白けるが、古典的な構成にうまくはめれば意外とカタルシスがあることを知りました。
# by lol_5 | 2012-01-08 16:57 | 文学フリマ

第13回文学フリマ読書感想「猫紫」

やらやら「あたらしいスポーツの話」「卓球革命」(猫紫)

野球・サッカー・卓球の各種スポーツについての革命的、というかタガの完全に外れた戦術を描いた掌編小説。
トンデモスポーツでいうと、イナズマイレブンとかテニスの王子様とかの方が大概ひどいが、この作品はそれらと違ってそもそも温度が低く、まえがきやあとがきで「(そのスポーツのことは)よくわからない」と作者本人のコメントあるように、各種スポーツへの関心のなさが作品から滲み出ている。
興味ないのになんでスポーツ物を書くのかという疑問を持つ人もいるだろうが、知らない人特有の「なんでこんなルールなの?」という思いを作品にまで昇華した、しょうもない知的好奇心に惚れた。
無料配布でもらったものはあんまり期待しないんだけど、これは良かった。
# by lol_5 | 2011-12-17 10:39 | 文学フリマ

第13回文学フリマ読書感想「ながしろばんり作品集vol.1」

ながしろばんり作品集vol.1「ちょこっとカオス」(書肆べう)

B6サイズ8ページの非常にコンパクトな装丁に、不条理な夢のような掌編が8本掲載。紙面もユニークな挿絵のいれ方というか、構成が意識されてて奇譚の雰囲気が醸し出されてる。
動物とか虫をモチーフにしたものが多く、おどろおどろしい不安よりは、ユーモラスな気配の方が強い感じ。
ことばの選び方がなんというか、どことなく古風で丸みのあるようで、それが奇怪な内容とまったり混ざりあって面白かった。

個人的なお気に入りは、徹頭徹尾なんだかわからないままの「槁木死灰」と、スケールが大きくてなんとなく可笑しい「けえけえ鳥の巣にて」
# by lol_5 | 2011-12-07 22:35 | 文学フリマ